マクドナルド創業者レイ・クロックが作ったスモールビジネスの成功法則

なぜレイ・クロックはマクドナルドを成功させることができたのか?

創業者のレイ・クロックがスモールビジネスを成功させる仕組みを作ったことがマクドナルドの成功要因だと言われている。では、クロックが作った仕組みとはどんなものだろうか。

その仕組みの全貌を教えてもらったのは、日本マクドナルドの仕組みをゼロから作った林俊範先生からだった。

林先生は日本マクドナルドを退職した後、15年かけてマクドナルドで体得したスモールビジネスの成功法則をA3一枚の紙にまとめられていた。それが「繁栄実現の経営の法則」というものだった。

 

私がこの図を初めて目にした時は、何が書いてあるかさっぱりわからなかった。しかし、全体的な意味がざっくりでも理解できると店舗経営のあるべき形が見えてくるようになった。すると現状の問題点や解決策までわかってくる。

林先生は、レイ・クロックが確立した成功法則を日本の中小企業に伝えたかったのだ。なぜ伝えようと思われたのか?

「日本の社長は世界一経営の才覚があります。でも、それが悲劇。自分の才能で経営ができてしまう。だから人に仕事を任せることができません」

「日本人は1店舗なら何とか才覚で経営できる人は多い。でも2店舗目でほとんど失敗する。アメリカ人は自分に才能がないことを知っている。だから素直に経営を勉強するのです。正しい方法を学ぶから店舗も増やすこともできるのです」

なるほどと思った。私自身も自分の店(整骨院)を開業し必死に頑張って軌道に乗せることができた。しかし、調子に乗って2店目を出したあたりから問題が勃発した。4~5店舗目になるとさらに問題は増えていった。ほとんどは人の問題だった。確かに専門分野の修業は積んだが、店舗経営や人の扱いについては全く学んでいなかったのだ。

林先生は日本の中小企業も正しい経営を学ぶことで多くの人が苦しみから解放されると考えられていた。だから伝えようとされたのだ。

初期のマクドナルドでも同じだったようだ。マクドナルド兄弟は自分の店を繁盛させることはできたが、フランチャイズ加盟店を繁盛させることはできなかった。兄弟は繁盛店を作ることはできても、繁盛店を任せるノウハウを持ち合わせていなかった。

一方のクロックはマクドナルドという店は作ってはいないが、繁盛店に何が必要かを見抜いていた。それを仕組みにしたので、フランチャイズ権を獲得して大成功させることができた。

そのクロックが作った仕組みが「繁栄実現の経営の法則」だ。なぜ「法則」なのか?

林先生は言われた。「法則とは100%。原理原則は80%。絶対的は70%。つまり法則とは絶対そうなる仕組みです」林先生は仕組みを総称して「利益のピラミッド経営法」と呼ばれていた。

利益のピラミッド経営法はどんな時代であっても変わることのない不変の仕組だという。でも、ファストフードの仕組みが全ての中小企業やスモールビジネスに合うのかという疑問も湧いてくる。

クロックが作った仕組みとは、全世界に展開するマクドナルドのような大チェーンの仕組みではないのか。林先生は逆だと言われた。

「NO! マクドナルドはスモールビジネスの仕組みです。地域の中で1店舗1店舗が繁栄しなければならない。1店でも3店でも仕組みは同じ。弱者だからこそ、大企業に勝つ経営プログラムがなければならない。だから1店舗ごとにプログラムが必要です。なぜなら大企業が我々の業界に入ってくるからである。」

マクドナルドの仕組みとは、大企業ではなく、スモールビジネスのための仕組みだという。だから初めて開業するフランチャイズオーナーも学ぶ。

林先生は言われた。

「どんなに会社が好きでも負けたら終わる。彼ら(大企業)に負けない取り組みを持たなければならない。」

「大企業の特徴。頭はいいが、当事者意識がない批評家。スモールにはコツコツとやり遂げる人が必要! 一人一人を育成して人で勝たなければならない。『売上=人』です。」

「普通は入社したら勉強しない。だけどスモールは入社してから勉強しなければならない」

レイ・クロックは経営を学ぶことを最優先し、全財産を投じて社内教育機関「ハンバーガー大学」を作った。日本マクドナルドも銀座一号店を作る前に「ハンバーガー大学」を作っている。

スモールビジネスは、店を出す前に経営を勉強することが成功法則なのだとしたら、私はまったく逆の道を歩んでいた。ほとんどの起業家も同じではないだろうか。マクドナルドのフランチャイジー経営者は自分の店を持つ前に徹底的に勉強させられる。

日本人として初めてアメリカのハンバーガー大学を受講した林先生のとなりにレイ・クロックが座って来てこう言ったという。

「マクドナルドの仕事はきついだろう? だからここで勉強するんだよ」と。

マクドナルドには「ワーカーになってはいけない!」という教えがあるという。経営者が現場作業に熟達していることは大切だが、いつまでも現場ワーカーを続けるのではなく、人を育ててマネジメントしなければならないと。

だからハンバーガー大学で勉強するのは、ハンバーガーの焼き方だけではない。人の雇い方から育て方や接し方まで。人(ピープル)の大部分が教育カリキュラムになっている。

6階層のピラミッドの中は英語なのでわかりにくいが、次のような意味になる。

「Staffing」:スタッフィング ~適正人数の確保

「Training」:トレーニング ~教育訓練

「Q.S.C+Ⅴ」:「品質・サービス・清潔さ+価値」~100%顧客満足度

「Marketing」:マーケティング ~地域への販売促進活動

「Sales Building」:セールスビルディング ~売上の増大

「Profit」:プロフィット ~利益の確保(コストコントロール)

正しい経営のプロセスが6階層のピラミッドに入っている。店舗経営者は、まず人を採用して仕事をトレーニングする。そしてチームワークによって顧客満足が実現する。結果として適正な売上利益を獲得することができる。

この経営プロセスは、すべて「人」の部分から始まっている。私が店を持ってから振り回された失敗の数々は、ほぼこの人の部分だった。

クロックは人の部分に着目したから成功したのかと思った。レイ・クロックは生涯「マクドナルドはピープルビジネスである」と言い続けた。人財育成こそがスモールの生き残る道だと教えてくれる。

ピープル・ビジネス・スクール 中園 徹