同一労働同一賃金の真の問題点と解決策② 「職務遂行責任」

正規・非正規の社員を問わずに同じ仕事に対して同じ賃金を支払う「同一労働同一賃金」の導入が日本では進まない。非正規のパートさんからは、社員と同じ仕事をしているのに給与が全然違うという不満の声も聞こえてくる。

確かにパートさんが社員と同じきつい仕事を、同じ時間しているのに待遇に差があれば納得はできないだろう。何が問題なのか。

私も社員に給与を支払う立場になった時に、「同じ仕事をしている人にどうやって待遇の差をつけたらいいのか」という悩みがあった。また「人によって待遇に差が出た時にどう納得させればいいのか」というのも課題であった。

ある疑問もわいてくる。同じ仕事をするなら賃金も同じという考えであれば、マクドナルドはどうなるのだろうか。マクドナルドではパートさんも店長も、同じようにハンバーガーやポテトを作っている。だったら賃金も同じにしなければならないではないか。

私は林俊範先生からマクドナルドがベースとなる人事制度を教えてもらい、なぜパートさんと店長の給与に差がつくのか理由がわかった。それは「職務遂行責任」という概念だった。「なるほど、同じ作業をしていても、責任が違うから賃金に差がつくのか」と無知な私でも納得できた。

林先生は言っていた「日本には職務遂行責任がない。それが大きな問題。だから店長も朝から晩までパートさんと同じ仕事をしてクタクタになっている」と。

日本では、社員もパートさんも仕事における責任が不明確で、同じ作業をさせていることが日本の問題点であり、待遇格差の不満にもつながっていると言う。

マクドナルドでは、店舗で働くパートさんや社員のランクがいくつも分かれている。ハンバーガーを提供する仕事は同じでも、ランクに応じて責任や賃金が細かく分かれている。それを表したものがキャリアパスプランだ。ランクに応じた職務遂行責任と待遇が誰から見てもわかるようになっている。

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店舗で働くパートさんは、ランクに応じて仕事の生産性が求められる。また、社員であるマネジャーは、現場作業の他に「面接・採用」から「稼働計画表の作成」など運営責任がある。スウィングマネジャー(SWM)と呼ばれるパート店長には、社員と同等の責任が持たされ、時給レベルもほぼ同等になっている。しかも、ランクに応じた仕事はマニュアルによって記述されている。

マクドナルドに限らず海外では「職務遂行責任記述書( JOB DESCRIPTION)」というものがあり、職務遂行度に応じて待遇が決まるという。勤続年数が考慮されることは少ない。逆に勤続年数が浅くても、職務遂行度が高ければ給与も上がるのだ。ある意味、厳しいプロの世界を感じさせる。

林先生は言う「日本の会社は肩書ばっかり作って、全然責任を持たせていません。本当にもったいない」と。

外資系企業の中途採用面接でも「あなたは何ができますか?」という質問に対して「私は部長ができます」と肩書で答える人もいると聞く。肩書と職務は全く違うのに話が通じないことがよくあるそうだ。

ある社長が言っていた。「私は店長をやっていました」という人材を採ってみたら、まったく何にもできない人だったので非常に困ったと。

社歴や肩書で給与を決めるのではなく、職務遂行責任に応じて公平公正に待遇を決めることが大切だと林先生から教えていただいた。

非正規社員の不満をなくすには、「どんな仕事をすれば、どんな待遇が得られるのか」を、誰から見てもわかるように明確にしなければならない。社員や非正規に関わらず、職務遂行責任に応じて平等に賃金を支払うことこそ「同一労働同一賃金」なのだろう。

本当に職務遂行責任が明確になれば、社員と非正規社員の立場が逆転する職場も少なくないかもしれない。

もし、日本の会社が共通した職務遂行責任の概念を持てば、転職において不利な待遇を受けることも減るだろう。むしろ本当に仕事のできる人は、より良い待遇を受ける機会も増え、雇用もダイナミックになると思われる。

働く人の「職務遂行責任」を明確にすることこそ、「同一労働同一賃金」を実現する真の解決策ではないだろうか。

中園 徹