同一労働同一賃金の真の問題点と解決策③ 「年功序列」

正規・非正規の社員を問わず同じ仕事に対して同じ賃金を支払う「同一労働同一賃金」の導入が進まない大きな理由が「年功序列」だと言われている。

一方で年功序列は、日本型経営に見られる世界に誇る良い点であるという見方もある。年功序列は本当に日本型経営なのか。本当に良いものなのか。

日本の中小企業は多くが年功序列の人事制度になっている。私も起業後10年ぐらいは年功序列だった。しかし私は日本型経営を目指したことは一度もない。単に評価基準や賃金制度もなく年功序列以外に方法を知らなかっただけである。

多くの中小企業経営者は日本型経営を意識することなく、自然と年功序列の賃金体系をとっていると思われる。なぜ年功序列になるのだろうか。

中小企業経営者の多くは、苦しい時期に力になってくれた創業メンバーには特段の思い入れがある。長年共に汗を流してくれた社員には報いてあげたいと思っている。その感謝の気持ちもあり年功序列になっているのかもしれない。

私自身も長年勤めてくれる人こそ信用できると考えて年々昇給させてきた。年功序列は日本型経営というよりも、中小企業がたどる自然の道なのではないだろうか。

年功序列は大きな問題もはらんでいる。上昇する賃金と、社員の労働生産性がリンクしていない点だ。

私は勤続年数が長くなれば、仕事も熟練して生産性も高くなるから昇給できると思っていた。しかし実際に人を雇ってみて、勤続年数と生産性は必ずしも一致しないことに愕然とした。むしろ年功序列で高給になった人の生産性が低いことも少なくなかった。

ある飲食店経営者が言っていた「フルタイムの人を毎年昇給させたいけれど、働き方は同じなのに給与だけを上げたらうちはつぶれてしまう」と。確かに売上が一定なのに人件費だけを上げることはできない。

本当は多くの経営者は、仕事に関係なく勤続年数だけで昇給した社員を何とかしたいと思っているが、辞められると困るので仕方なく年功序列で微増の昇給をしているのも現状だろう。

年功序列には逆の問題もある。ある上場企業にいた知人は、定年の3年前に九州支店に赴任して大きな成果を収めて評価された。定年後も嘱託として会社に残るよう説得されたが、資格等級や給与も大幅に下がるため結局退職の道を選んだ。年功序列とは成果を出せる人でも年齢によって減給されてしまう制度なのだ。

「年功序列」には仕事ではなく勤続年数によって給与が増減する側面がある。社歴や労働時間に関係なく、同じ仕事に同じ賃金を支払う「同一労働同一賃金」とは真逆ともいえる。なぜなら「年功序列」とは「同一労働・複数賃金」の人事制度なのだから。同一労働同一賃金との融合はありえないだろう。

時々考えることがある。もしプロ野球が年功序列だったらどうなるかと。果たして強いチームができるだろうか。実際には入団数年で高額年棒になる若手選手もあれば、在籍10年の活躍したベテランでも戦力外通告されることもある。しかしプロ野球の雇用に疑問を持つ人はいない。

年齢や在籍年数に関係なく、仕事の内容によって賃金が決まるプロ野球の雇用形態は、同一労働同一賃金に近いのかもしれない。プロ野球選手と働く社員は違うのだろうか。

元プロ野球の長嶋茂雄氏は、アナウンサーになった娘が仕事で失敗した時に次のようにアドバイスしたという。「サラリーマンだってお金をもらっているプロなんだから。プロとしてしっかりやんなくちゃダメでしょ。」と。

長嶋茂雄氏の言うように、野球選手と同じく社員もお金をもらうプロだと捉えるなら、若手でも活躍次第で先輩を追い越して昇給昇格し、職務を果たしていなければ戦力外通告を受けるようになるかもしれない。

会社をプロ集団として強い組織にするのなら、適しているのは「年功序列」ではなく「同一労働同一賃金」ではないだろうか。

 中園 徹