同一労働同一賃金の真の問題点と解決策④ 「考え方の変革」

なぜ中小企業への「同一労働同一賃金」導入が進まないのか。経営者の「公平さ」に対する考え方に原因があるとも考えられる。

公平とは、公に平等で一部だけに手厚くしない、偏らないということを指す。

多くの中小企業は創業してから年功序列の形をとる。朝から晩まで頑張る従業員に公平に報いたいと思う経営者も少なくない。

私自身も起業後は勤続年数に応じて従業員を昇給させていた。また仕事の内容で人の給与に差をつけることもしなかった。本当は仕事の内容によって給与に差をつけたかった。しかしできなった。

ある時、二人の主婦パートさんに時給の差をつけたら猛抗議を受けたことがあった。頑張っているのに不公平だと言うのだ。経営者感覚で差をつけたのだが、明快な理由も答えることができなかった。その恐ろしい体験以来、二人を公平(?)に昇給させるようにした。

でも、これは本当に公平だろうか。確かに皆頑張ってはいるが、仕事の中身には差がみられる。皆を同時に昇給させたのでは、経営的にもいつか限界が来るのではという不安もあった。

そんな時に、日本マクドナルドの仕組みを作った林俊範先生に出会った。別にマクドナルドに興味があったわけではないが、働くパートさんや社員に明確な昇給制度があると知り興味をもった。

アメリカ発のマクドナルドは完全なる「同一労働同一賃金」の制度になっていた。創業者のレイ・A・クロックはパート・アルバイトからマネジャーまで、どうすれば給与が上がるかを明確にして人材を育成していた。

アメリカマクドナルドには、新入社員や中途採用の差は一切ない。性別はもちろん学歴や国籍にも関係なく、仕事次第で昇給昇格できるようになっていた。

たとえパート・アルバイトであっても、働き方次第で店長に昇格し、経営幹部にもなれる。逆にいくら学歴やキャリアがあっても、働きが悪ければカウンセリング対象者となる。

マクドナルドの制度は誰でも実力次第で昇給できる完全な「同一労働同一賃金」である。実際、歴代社長にはパート・アルバイト出身者も多い。

私は「公平さ」とは、偏りなく皆を同じような待遇にすることだと思っていたが、仕組みを知って大きな間違いだったと思った。

林先生は言われた「公平とは、仕事で成果を出した人を公正に評価してあげることです」と。それが世界の常識であることも教えてもらった。

無知な私も本当の公正さについて知り、仕事の内容によって賃金は差をつけるべきだと確信した。考え方が年功序列から同一労働同一賃金へ変革した瞬間だった。

マクドナルドの考え方は独特なのだろうか。世界中で活躍し、日産自動車の経営危機を立て直したカルロス・ゴーン氏は、日本型経営について次のように語っている。

「私はかねて終身雇用制はともかく、年功序列の賃金・昇進制度は弊害だと思っていた。働き手は仕事の成果、すなわち会社への貢献で評価されるべきだ。成果を出したのに出していない人と同じ賃金や昇進ペースでは公平性を欠く。」   (2017/1/15付日本経済新聞 「私の履歴書」より)

会社における公平さとは何を意味するのだろうか。言葉は同じでも経営者の捉え方次第で、意味は大きく変わってしまう。

同一労働同一賃金を導入するために必要なことは、まず経営者自身が「公平さ」について考え方を変革することから始まるのかもしれない。

 中園 徹