同一労働同一賃金の真の問題点と解決策⑥ 「導入の手順」

「同一労働同一賃金」の導入は中小企業の人材不足を解消し、労働生産性を高めて会社の収益を上げる効果が期待できる。ただ、一番の問題は導入の方法である。現状が年功序列型の経営の場合、どのようにシフトすればいいのだろうか。

私自身も起業して数年間はざっくりとした年功序列型の賃金体系だった。フルタイムとパートタイムの仕事は明確になっておらず労働生産性も悪かった。社員は職人的な作業を行いながらもパートさんと同じような簡単な軽作業に従事。当然、長時間労働で昇給もできなかった。

社員やパートさんを問わずに、仕事の内容に応じて同じ賃金を支払う「同一労働同一賃金」型に何とかシフトしたいと考えていた。しかし、その方法は全くわからなかった。

そんな時に日本マクドナルドの仕組みを作られた林俊範先生に出会った。そして、仕事の内容に応じて賃金を支払うということは「人事制度の導入」であることを教えてもらった。

確かに「同一労働同一賃金」が仕事そのものに対して賃金を支払う考え方であるならば、定期的に仕事の内容を評価・査定して賃金を支払う形になる。

私自身、社員もパートさんも勤務評価の形をとらず、日々の働き具合と顔色を見ながら賃金を決めていた。したがって昇給は仕事よりも本人の印象が大きく作用していた。そのため離職や人間関係など多くの問題が勃発していた。

どれぐらいの企業が正規社員やパートさんなどの仕事そのものを評価して賃金を決定しているだろうか。中小企業やスモールビジネスのほとんどは行えていないのではないだろうか。

林先生は日本の企業の問題点は評価の仕組みがないことを指摘されていた。そして中小企業に社員やパートさんの人事評価制度の導入を啓蒙されていた。林先生が勧めるのは、仕事の内容を評価する「同一労働同一賃金」型の人事評価制度であった。林先生の人事制度導入を進める手順は次の4ステップからなっていた。

  • STEP1:オペレーションマニュアルの作成 (業務マニュアル)
  • STEP2:キャリアパスプランの構築と明確化 (職能階級制度)
  • STEP3:パフォーマンスレビューの作成 (勤務評価シート)
  • STEP4:定期的な勤務評価の実施 (社員年3回・パート年4回)

少しわかりにくいかもしれないが、手順を要約すると次のようになる。

  • 全種類の仕事を洗い出す。頻度の高いものからマニュアル化する
  • 仕事を難易度で振り分けて、それぞれの仕事に値段をつける
  • 社員やパートの職務に対する評価表を作成する
  • 個別の評価面談を実施し、評価内容と昇給を告げる

私自身も、社員の仕事とパートさんの仕事の融合はあり得ないと思っていた。しかし、この手順で進めていくと社員とパートさんに関係なく仕事ができることが分かった。しかも、難しい仕事ができるならパートさんには社員並みの時給を支払うことも可能になっていった。

同一労働同一賃金を導入するための第一歩は仕事(作業)の分解とマニュアル化である。これはマクドナルドの成り立ちを自社に置き換えるとわかりやすい。

マクドナルドの始まりは、マクドナルド兄弟が営む個人経営のレストランだった。はじめは兄弟2人が料理人だったが経営の限界を感じて、料理を流れ作業の分業体制に変革した。企業で言えば、社員とパートさんがそれぞれ単能工として仕事をする状態である。これでは生産性も悪く賃金もあげられない。

流れ作業だったマクドナルドの店を、マニュアル化して多能工にしたのが創業者のレイ・クロックだった。さらに仕事の内容と時給を連動させていくことで、労働時間ではなく仕事の内容で賃金が決まる仕組みもできた。このことで労働生産性は飛躍的にアップしていった。

これと同じ手順を踏むことで同一労働同一賃金の導入はかなり現実的になる。

林先生は力説されていた。飲食業に限らず営業職やデスクワークなど、どんな仕事であっても、内容を分析してマニュアル化すれば誰でもできるようになると。

正社員や非正規社員に限らず、仕事の内容に対して賃金を支払うことを目指すのなら、まず仕事そのものを分解して整理整頓することが「同一労働同一賃金」導入の第一歩になるのではないだろうか。

「何事も小さな仕事に分けてしまえば、特に難しくない」レイ・クロック

中園 徹