中小企業における失敗しないインターンシップの実際

中小企業におけるインターンシップ(入社前の就業体験)のやり方は、「パート・アルバイト経験者からの正社員採用」と「新卒者や紹介での正社員採用」とに大別されることは前回述べた。*参考「中小企業における失敗しないインターンシップのやり方」

私が林俊範先生から学んだインターンシップ人材採用のやり方はアメリカマクドナルドのピープルビジネスが源流となっている。そのインターンシップのやり方が本当に日本の中小企業に通用するのだろうか。 信じられる人は本当に少ないだろう。そこでいつかいくつかの実例を紹介したい。

まずピープルビジネスを実践するスキンケア美容サロンの事例である。関西と九州に店舗展開する会社で、エステシャン兼店長の正社員採用が経営の課題であった。 特に九州の店舗では店長候補となる正社員の採用がなかなかうまくいってなかった。

そこでターゲットセレクションを実行し、知人から20代女性を正社員候補として紹介してもらったのだった。それまで社員採用しても実際の現場業務に従事すると退職するケースが多かったのだが、今回は30日のインターンシップでOJE(就業試験)を実行するし見事採用することができたという。

下記はその会社が実行したマニュアルである。

実際に30日の就業試験を実行した経営者も今まで失敗続きだったので、ダメもとでマニュアル通りにやってみたそうだ。正直なところ、1ヶ月も採用試験があるので、途中で断念されても仕方がないとの思いで臨んだという。

一方の採用された方は、昨年に新卒で就職したものの職場が合わずに退職したばかりの女性だった。新卒というより転職組となる。インターンシップを見事にクリアして採用された本人に感想を聞いてみた。

「私は今年の転職が2度目だったので、今回の採用試験だけは絶対に逃したくないという思いで臨みました。それまで経験のないエステの仕事を1ヶ月でマスターしなければならず必死の思いでしたが、何とかクリアできました。」

「途中で止めようとは思いませんでしたか?」と質問してみた。

「経営者である店長が一か月間ものあいだ一生懸命フォローしてくれたことに『この人の下で働いてみたい』という気持ちが出てきました。採用試験中は決して楽ではありませんでしたが、是非この職場で働きたいと思いました。もちろん落とされるかもしれないという不安もありましたので、合格した時は本当に嬉しかったです。」このコメントを聞いて採用した経営者は涙ぐんでいた。

飲食業であるアメリカマクドナルドとは違う日本の中小企業であっても ターゲットセレクションによるインターンシップは実際に活用できるのではないだろうか。

現在の日本は慢性的な人材不足であるが、アメリカマクドナルドであっても元々は人の獲れないスモールビジネスだったのだ。だからこそフランチャイジーのためのターゲットセレクションが開発されたという。

林先生のマニュアルには、スモールビジネスこそ女性の労働市場を考えなければならなういと書いてある。

私事だが、かつて私の経営していた整骨院にもパートの受付女性がたくさんいた。彼女たちの中からも色々な事情で正社員になりたいと申し出る人もが時折あった。だが整骨院の資格を持たない女性を正社員登用することは難しい。

そこで新たに展開し始めた介護事業所においてパートさんを正社員の施設長として採用するようになっていった。その際も必ずインターンシップを実践するよう心掛けた。以前、うちでパートから正社員採用された女性のコメントを体験発表してもらったことがある。彼女のコメントをいくつか抜粋したい。

「私は地方銀行の外国為替の事務業務を経験して結婚退職しました。接客は苦手な方でしたが、子育てが落ち着いて整骨院受付にパートとして働き出しました。約8年働いた時、ある時心境の変化から正社員採用の申し出をしたのです 。整骨院で店長にはなれないけれど介護施設なら施設長の正社員になる道がありますと言われました。私は事務仕事が専門で営業したり人に接したりすることは苦手な方でした。でも30日間チャレンジして、もし駄目であれば元のパートに戻れるし、頑張れば正社員の道も開けるということでチャレンジしてみることにしました。」

実は彼女は経験のない介護職に自信が持てず、一度社員登用のチャンレジを断念している。しばらくして考え直して再度チャレンジを申し出てきたのだった。

「整骨院の受付と違い、介護の現場は全く業務の流れが違う現場で戸惑いましたが、30日間綿密なスケジュールにそって一つ一つの新しい仕事をマスターしていくたびに責任と覚悟のようなものが芽生えてきました。仕事には毎日新しい 発見があり、いつの間にか楽しいとも感じるようになりました。 この職場ならやれるという自信も出てきました。30日を終えて施設長の面談で合格をもらい、何とか採用になった時はホッとしました。」

その後、彼女は介護施設の施設長として運営に携わった後 現在は本部事務所の オフィスマネージャーとして活躍してくれている。彼女は体験発表でこのように締めくくった。

「本来消極的な私はターゲットセレクションがなければ、今の仕事はしてなかったと思います。特に女性は変われるのではないかと思います。女性は子育てなどを経て、男性より環境の変化に対応する力はあると思います。機会が与ええられると女性は自分の意外な力を発見できると私自身が実感しています。また覚悟を決めると道が開けるし、自信にもつながりました。たとえ職場では地味な人であっても、この人はこんな人だという決めつけをせずにチャンスを与えてあげてほしいと思います。」

私も女性に大きな可能性があることは知らなかった。林先生の教えを少しずつやってみて、はじめて女性の持つチカラを信じられるようになった。そして今では多くの試練や局面を、彼女たちに救ってもらっている。

世の中には、まだ多くの可能性を秘めた女性たちが埋もれている。その女性たちにチャンスが与えられの最高の能力が発揮されることを祈りたい。

ピープル・ビジネス・スクール 中園 徹