マクドナルド兄弟の大繁盛店が発展しなかった理由

マクドナルド兄弟の改革により、店は行列のできる大繁盛店になりました。彼らは儲かる店を作ることはできましたが発展させることはできませんでした。なぜ店を増やせなかったのでしょうか。

兄弟の店は飲食業界誌に成功事例として紹介される大評判を呼びました。見学者も殺到。彼らはノウハウをフランチャイズとして売り出したのです。

マクドナルドという商標権を許し、流れ作業からハンバーガーの作り方、厨房設備の内容まで細かく教えてあげたのです。しかし、ノウハウを修得したフランチャイズ店はどこも兄弟のような行列のできる大繁盛店にはなりませんでした。

ほとんどのフランチャイジー(加盟者)たちが、自分たちの創意工夫を加えて新しい形態のマクドナルドを作り始めたからです。特に飲食業において経験豊かな人たちは、マクドナルドのメニューには満足しませんでした。「俺の方が美味しい物を提供できる」「ハンバーガーだけでは物足りない。新しいメニューを加えよう」等々。

不思議なことに兄弟よりもはるかにベテランの人たちが工夫を凝らして新たなメニューを付け加えても、兄弟の店のような繁盛店にはなりませんでした。料理の腕に自信のある彼らも、なぜ繁盛しないのかがわかりませんでした。

メニューを増やした人たちは結果として業務の流れが複雑となり、スピーディに商品を提供できなくなっていました。また、違う味付けを工夫することでマクドナルド兄弟の店のようにリピートする味付けからかけ離れてしまったのです。

多くのベテランたちが品質にこだわるがあまり本当に大切なことを見抜けませんでした。経験豊かなことや専門性が高いことが必ずしも成功につながるとは限りません。結局、誰も大繁盛店を再現することはできなかったのです。

マクドナルド兄弟も繁盛店を作りましたが、それを他人に伝えるしくみまでは作りませんでした。もっとも彼らは十分に財産もあり、現状に満足していました。今さら苦労するより、ゆっくりと過ごしたかったのです。

兄弟が繁盛店を発展させられなかった理由は、その気がなかったこと。そして、他人に店を任せる仕組みを作らなかったことでした。そして最大の理由は彼ら自身も真の成功要因がわからなかったことです。唯一、兄弟の店を再現できたのがレイ・クロックだったのです。

「いろんな現象を分析する能力がなければ経営はできない」 レイ・クロック

中園 徹