オランダと日本の働き方の違い① 労働時間の考え方

なぜオランダという1600万人の小さな国が、日本よりはるかに高い仕事の生産性を出せるのか。その理由を探るためにオランダ全般の働き方についてインタビュー行なった。

私の質問に答えてくれたのは、世界規模の人材派遣会社アデコ(オランダ・グローニンゲン)のイエッセ・プリンス氏(Jesse Prins)。彼にオランダの働き方について聞いてみた。以下は私との質疑応答。

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オランダの雇用について教えて下さい。

「オランダの最低賃金は9ユーロです(1,170円:1ユーロ130円)。正規社員の週労働時間は40時間から32時間など組み合わせは自由です。パートタイムでも労働時間は自由です。」

パートタイムと社員の給与の差はありますか?

「給与の差はほとんどないです。40時間の人には40時間分の給与。20時間の人には、その半分が支払われます。オランダは完全な時給制度です。」

日本では社員は責任ある仕事。パートは補助的な仕事をするのが一般的ですが。オランダではどうですか?

「オランダでは、パートもフルタイムも仕事においては同じ責任を追います。」

日本では仕事が終わるまですることが責任だと言われることが多い。だからパートタイマーは責任がないとも言われる。オランダにおける仕事の責任とは?

「オランダは仕事の内容が明確なので5時の終業予定でも3時に終われば帰宅できます。たとえ時間内に仕事が終了しなくても時間が来れば終了。但し評価は下がります。」

仕事の決め方はどうなっていますか?

「年の初めに仕事の目標値が示されます。目標に達しない場合でも、給与が減額されることはない。現状にとどまるか、昇格するかのどちらかである。」

給与の減額はありますか?

「減俸はありありません。もし減額されると裁判沙汰になる。」

解雇はありますか?

「終身雇用という制度はないです。年金積み立ては67歳まで。雇用される時は、2回契約社員として働き(年単位や月単位など)、3度目に正規雇用になれます。もし、仕事ができなければ次回の契約更新がないです。」

日本では難しい仕事は正社員が行ない、簡単なことをパートさんに任せるという考え方があります。オランダでは正社員(フルタイム)とパートタイムの人の能力の差はいかがでしょうか?

「オランダではそのような偏見は全くありません。なぜ、働く時間が違うだけで能力の差が起きるのでしょうか。ちょっと質問の意味がわかりません。また、労働時間による偏見は起こりえてはならないと思います。」

勤務時間について教えて下さい。

「もし、週40時間のフルタイム社員が、明日から週35時間パートタイムの働き方を希望したいと上司に相談すればできます。それは才能や能力には関係がありません。たとえば週5時間分だけ短くなったら、勤務時間分だけの給与をもらいます。減った時間分は、他の人が5時間補います。働く時間は細切れになっています。」

どんな理由で働く時間を短くするのですか?

「理由は様々です。子供を育てるため、もっと将来のために勉強したい、1日余分に休んでリラックスしたい、趣味の時間をもちたいなどです。別に道徳的な理由は必要ないです。全くの自由。ダブルワークでも可能です。」

日本では時間の制約がある女性の活用が進んでいないが、オランダではどうですか?

「オランダでは男性と女性は完全に同等です。文化的背景もあり、父と母は同等に子育てをします。働いている責任も同じで差別はありません。但し、女性は子供の病気の看病やお迎えなどの影響があって、まだトップマネジメントになる女性は少ないと言えます。」

オランダの働き方についてのインタビューは以上である。

通訳してくれたオランダ在住の日本人・中村崇士氏の言葉が印象的だった。

「オランダでは20時間働く人も、40時間働く人も全く同じ権利を与えられています。女性も男性も全く同じ権利があります。逆になぜ差が生じるか彼らは理解ができないようです。私が質問しても中々意味が通じませんでした。日本での差は、たぶん偏見から来るものではないでしょうか。」

オランダという国の労働生産性が高い理由として、男女や労働時間の違いによる差がないことは直接関係があるとは断言できない。しかし、仕事の内容が時間ごとに明確であることは確かだ。そこは大きく日本と違う点だと感じた。

もちろん日本の中にも、働く時間に関係なく同等の責任と権限を与えている会社もある。そのような企業は大抵、業績も生産性もよい。

プリンス氏によると、現在のオランダには人手不足は全くないそうである。今の日本がオランダのように、労働時間に差がないワークシェアリングを取り入れることは、中小企業だけでなく雇用社会の問題解決になるのではないだろうか。

 中園 徹