どうすれば社員の給与を上げられるのか

社員の昇給は、経営における重要なテーマである。私も初めてフルタイムの従業員を雇った時は「どうすれば社員の給与を上げられるのか」ということで悩み続けた。

はじめて雇った社員の中には近々結婚する者もいた。将来的に安心して働いてもらうには、昇給制度の確立が必須であった。でもどうすればいいのか全くわからない。

そこで大型書店に行き、「社員の給与体系作り」という本を片っ端から読んでみた。しかし、どの本も大企業の年功序列型で、年々昇給させるというモデルであった。

年ごとに会社が成長することが前提の給与体系は、スモールビジネスにはそぐわない。また、社員一人当たりの稼ぎ高も年々上がっていくとも限らない。

特に私の場合は整骨院という業種だったため、一人当たりの稼ぎ高(粗利益)は月間多い人でも80~100万円だ。これは一般的な理容・美容やエステ・マッサージ関連でも同じだ。また飲食業における料理人でも同じことだろう。どう頑張っても稼ぎ高を200万~300万円にすることはできない。

一体どうすれば社員の給与を上げることができるのか。悩み続けて5年目。林俊範先生と出会い、マクドナルドの仕組みを知って謎が解けた。

社員はマネジャーとして育成すれば昇給できると教えられた。

「いつまでも社員を、現場ワーカー(労働者)として使ってはいけません。マネジャーを育成するのです。そうすれば、高い給与と良い労働環境を提供することができます。」

 この言葉には大いに勇気づけられた。

具体的にどうすればいのか。まず社員には、マネジャーとしての仕事を理解して実践してもらうことが重要である。マネジャーには4大目標というものがある。

<マネジャーの4大目標>

・人財の育成

・顧客満足(Q.S.Cレベル)の維持・向上

・売上の増大

・適正利益の確保

社員を昇給させるためには、職人育成ではなくマネジャー育成をすればいいのだと教えられた。つまり組織を作り、自分の分身に稼いでもらうのだ。

もちろん、はじめは現場の基本的な仕事をマスターしなければならない。次の段階として部下を育てて自分のチームを作り、客数を増やして売上・利益を構築する。だから組織の発展と共に、待遇や給与もあげていくことができるのだ。飲食業でいえば、コックではなく料理長を育成するのと同じである。

ただ、店舗マネジャーのままでは昇給に限界がある。やがては経営者に代わって複数の店舗を経営指導するスーパーバイザー(経営代行者)になることが最も大切になる。
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社員がスーパーバイザーになることで、会社も一流の給与と労働環境が提供できるようになる。

職人育成型の経営だと独立開業が前提となりダイナミックな昇給は難しい。これをSV育成型の経営にシフトすることで、給与を何倍にも昇給させることができる。つまり「社内企業家」の育成である。

日本マクドナルド創業者・藤田田氏は「ハンバーガーで社員に日本一の給与を出す」と創業当初から宣言した。この根底にはスーパーバイザーの育成があったという。

どうすれば社員の給与を上げられるのか。その答えは組織を作ることのできる社員、マネジャーやスーパーバイザーの育成にある。

中園 徹