なぜ日本の雇用社会は海外よりも生産性が低いのか

5 1月

日本の雇用社会は世界の中では劣等生である。仕事の生産性と女性の社会進出は先進国でも極めて低い。日本の1時間当たりの労働生産性はOECD加盟34カ国の中21位。男女格差ランキングでは日本は世界101位(世界経済フォーラム)だ。

一方、欧州の国々は日本よりはるかに仕事の生産性も高く女性の活用も進んでいる。なぜここまで日本と欧州に差ができるのか。その実態を見てみたいと思った。そこで2015年12月にオランダとフランスを見に行くことにした。ちなみに時間当たり労働生産性はオランダ4位。フランス7位(2014)。男女格差ランキングではオランダ13位。フランス15位となっており、日本よりは圧倒的に高い。

2015年10月に渡航の計画をした、ところが11月にパリで爆弾テロが起きた。正直行くべきなのかを迷った。現地にも相談してみた。パリで案内して下さる方が「私たちはテロには屈しない。今は至って普段通りの生活です」と言われた。私たちもその言葉を聞いて予定通り渡航することにした。パリの街は厳戒態勢であったが、市民は至って普段通りの生活をしていた。

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ノートルダム大聖堂前での警備

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シャンゼリゼ通りの人々

約2週間かけてオランダとフランス両国の雇用現場で話しを聞いた。そこでは驚くほどの共通点があった。大きな共通点は、パートタイムとフルタイムに差がないということであった。以下はオランダとフランスの雇用に関する共通点

・パートタイムとフルタイムに特別な差はない。社会保障も時間当たり賃金も同等。

・労働者は自分で働く時間を選択できる。上司にも相談できる。

・法的な週の労働時間はオランダ36時間。フランス35時間(日本は週40時間)

・男性と女性に差はない。マイノリティも同等。すべて能力で判断される。

たとえフルタイムの人が何らかの事情で労働時間を短縮したい場合も自由である。また特別な理由は必要ない。「子供ができた」「もう一度大学で勉強したい」「もう1日リラックスする日がほしい」など。やむを得ない事情でなくてもいいのだ。

日本でも同じような理由で働く時間を短くできるだろうか。「おまえ、やる気あるのか」「仕事をなめてんのか」と言われるかもしれない。また、直接的に言われなくても、責任ある仕事を外されることもあるだろう。

欧州の生産性の高い国を見て感じた日本との大きな違いは「時間の捉え方」である。日本は長時間働ける正社員を優遇する雇用社会である。パートタイマーの社員がどんなに頑張っても、正社員になれることは少ない。

一方の欧州は働く時間の長短に関係なく働く人を同等に扱う雇用社会である。フルタイムの社員と非正規社員のパートタイマーという垣根はない。パートタイムでも社員と同じ社会保障(社会保険や年金)がある。またフルタイムの社員でも希望次第でパートタイム勤務をすることが可能だ。

なぜ労働時間の増減が可能なのであろうか。それは時間単位での仕事の内容が明確化されているからだ。職務が明らかなので生産性も高い。誰かの労働時間が減っても、他の人による補填が可能なのが特徴である。しかも仕事はパートタイマーやフルタイムに関係なく、できる人に任せている。

日本では時間単位で仕事内容が明確になっていることは少ない。また、社員の仕事をパートタイマーに権限委譲することもまれである。この点が日本と欧州の生産性に大きな差を生んでいる。

日本の雇用社会は労働生産性や女性の活用で欧州に追いつけるのだろうか。今後向かっていく方向性は正しいのか。「配偶者控除廃止」や「扶養の見直し」は先送りされた。週5日、40時間の労働時間の規制を外すホワイトカラー・エグゼンプション対象者の拡大の可能性もある。

当面、日本のパートタイマー勤務者がフルタイム社員と同等の待遇を得て活躍できるには時間が掛かりそうだ。日本が進めている雇用システムは欧州を越える生産性や女性の活用を生み出すのだろうか。方向性は真逆とも言えるが、結果は神のみぞ知るである。

 中園 徹