メニューは増やすべきか減らすべきか

13 7月

スモールビジネスにおいて、お客様に提供するメニューは増やすべきなのか、それとも減らすべきなのだろうか。

行列のできる店を作ったマクドナルド兄弟の経営の変革がそれを教えてくれる。彼らの行なったことは1950年代。60年以上も前のことだがいまだに学ぶべき普遍的なものが多い。

経営危機に陥った兄弟は レストランを3ヶ月も閉めて大胆な改革を行なう決心をした。その手始めに行なったのがメニューの見直しであった。

彼らはまず過去3年分の売上伝票を分析した。すると、売上高の80%がハンバーガーであることに気付いた。

彼らは開業時にバーベキューシェフを雇って料理技術を身につけていた。料理人として彼らはバーベキューにこだわった。肉を焼く炉にもお金を掛けたが、自然と売れていくのは簡単に作れるハンバーガーであった。

そこで彼らは職人としてのこだわりを捨てて、お客の求めるメニューに絞ることにした。そして、25種類あったメニューを思いきって9種類にまで減らした。

さらに、一番売れていたハンバーガーを強化するため、サイズを若干小さくして、価格を30セントから15セントにまで値下げまでしている。

兄弟のメニュー絞込みによって、売れるメニューハンバーガーを低価格・高回転で提供するファストフードの原型が出来上がったわけだ。

これだけを聞くと「なんだ。ABC分析で売れ筋を強化しただけじゃないか」と思ってしまう。しかし実際に自分のビジネスで、どれだけの人がこれを実践できるだろうか。

スモールビジネスで起業した人は業界を問わず、ほとんどが職人的なこだわりメニューを重視する。

しかし、それは高単価だが、購買頻度は低いものが多い。

また、メニューを減らすことで客層が減るような恐怖感もあるだろう。

そして、ほとんどの起業家は、お客を増やそうとしてメニューを増やしてしまう。それが逆に品質を落として、固定客まで減らしてしまう。

私自身も、業界慣習で起業してからは「こだわりメニュー」に力を入れていた。単価も高いし、儲かりそうな気がする。だが、実際には逆であった。こだわりメニューで売上を増やすのはそう簡単ではない。もしかしたら一生掛かるかもしれない。

本当に売上を上げたいのなら、マクドナルド兄弟のように、売れているメニューに絞るべきなのだ。私も実際にやってみたが、簡単に売上が20%も伸びて驚いた経験もある。

メニューを減らす恩恵はまだある。メニューを減らすことで、無駄な設備やスペースはカットできる。しかも、原材料も売れるものに集中できることでコストダウンできる。さらに、スタッフの現場作業も簡素化し、早期育成できるようになる。

これは非人間的な単なる効率化ではない。あくまでお客様視点に立った「品質の向上と適正価格の実現」のためなのだ。

だが、ほとんどの起業家は職人マインドによって、この逆を行なってしまう。何を隠そう私自身がそうであったように。

もし迷える起業家がいれば、まずシンプルに実践してほしい。

・過去3年分の売上を分析する

・売れている順にメニューを絞るこ

メニューは減らすのではなく、できれば1/3に絞ること。これだけを勇気をもって実行してほしい。そうすれば、私のような暗黒の5年間は減らすことができるかもしれない。

Point 「メニューを1/3に減らす」

 中園 徹