マクドナルド兄弟に見るサービスの変革

20 7月

わが店のサービスレベルを上げるためにはどうすればいいのか?

その明確な答えは誰も持っていない。

一般的に「サービス向上」というと、「おもてなし」や「心を込めて」などの接客が取り沙汰される。

スモールビジネスという視点で見ると、マクドナルド兄弟の行なったサービス改革は、時代を超えて今なお学ぶべき点が多い。

彼らの店は個人経営のレストランだったが、多くの問題をはらんでいた。店は兄弟2人が料理を作ってテーブル客にサービスし、駐車場ではカーホップと呼ばれるウエイトレスが注文に対応するごく一般的な形である。

個人経営の場合は家族だけで長時間経営することが前提であるが、彼らの店はカーホップなどのスタッフはほとんど他人従業員でまかなっていた。

カーホップ目当ての若者で店はたまり場となり様々な問題が頻発し、他の客層が来るのを阻んでいた。おまけにカーホップは競合との争奪戦で人件費が急騰。やっと採用したカーホップも、すぐ条件の良い所へ転職してしまう始末である。

そこで彼らは3ヶ月店を閉めて経営改革を断行した。何と20人もいたカーホップを全員解雇し、お客自身が直接注文するセルフサービスに切り替えたのだ。

さらに、食器類も皿を使い捨てのペーパー類に変えることで洗う手間をなくした。そのことで、お客は店で食べなくても持ち帰りが可能となる。お客は、混雑する昼の時間にイライラすることなく、スムーズに食事ができるようになった。

この改革により、10分掛かっていた提供時間は30秒ほどに短縮され、逆にスタッフの生産性は飛躍的にアップした。

結果として売上は従来の1.5倍となり、逆に人件費は1/3となったのだ。

マクドナルド兄弟は、お客が望むことを徹底的に絞って分析した。ウエイトレスが注文を聞き、配膳されるよりも、より早く料理を提供される方が満足度は高いと見たのだろう。

「それは安いファストフードだから当たり前だ」と思うかもしれない。

では、高級な店なら待たされても平気だろうか。笑顔で丁寧な対応なら遅くてもストレスはないだろうか?

否。どんな店でも待ち時間は顧客満足を下げることは間違いない。

最近でも非常に丁寧な対応をしながら、待たせても平気なお店は結構ある。これにストレスを感じている人は多いはずだ。

業種・業態を問わず、まず「お客様の時間」を大切にすることがサービスにおいて最も重要であることをマクドナルド兄弟は教えてくれる。

このサービスの本質を見抜いたレイ・クロックは、サービスをする際の「時間と印象」に最もこだわった。

確かに、現代のあらゆるサービス業においても、時間の優位性を勝ち取った企業が圧勝している。

サービスの変革とは「時間の革命」なのかもしれない。

 中園 徹