社員の給与を決めることは経営者にとって頭が痛い。自分が社員だった時は、「この給与では安すぎる」「これぐらいはほしい」などと即座に判断できる。しかし、いざ人を雇う立場になると給与はいくらが妥当なのかわからなくなる。
私も初めて社員を雇った時は大いに悩んだ。高すぎては利益が残らない。でも給与が安いと社員が定着しない。これから結婚して所帯を持つ社員のためにも適正な給与を支払ってやりたいという思いもあった。
「一体、社員の給与はどうやって決めればいいのか?」
ある大手化粧品会社の人事課にいたことのある知人に聞いてみた。彼は「労働分配率で決めたらいいよ」とアドバイスしてくれた。「ろうどうぶんぱいりつ?」初めて聞く言葉だった。
早速、本屋に行って調べてみた。「労働分配率とは・・」まったく意味が理解できない。その後、少しずつ経営を勉強するようになってわかった次第だ。
労働分配率とは、売上から原価を引いた稼ぎ高(粗利益)における、人件費(給与や福利厚生費など)の割合を示すものである。業種に関係なく同じ指標となり、38%前後が適正という。
稼ぎ高の約3分の1が人件費となる。つまり3倍稼ぐのが指標である。なるほどと思った。シンプルに社員の稼ぎ高の33%ぐらいを給与に当てればいいのだ。
もし、社員に月給25万円支給したいなら75万円稼いでもらう。月給50万円を目指すなら150万円の稼ぎ高が指標となる。社員が複数の部下を持って、稼ぎ高を上げてくれれば可能だ。
給与の3倍稼ぐことは一般的な目安にもなっている。私は社員の給与を決める一つ目の目安は「3倍稼ぐ」ということを知った。
2つ目の給与を決める目安は「競合他社」である。林俊範先生から次のように教えられた。
「初任給は競合他社よりも高い給与を設定することが大切です。」
高質な人財を確保するためには、競合よりも高い給与を出すことがとても重要とのこと。特に初任給は大切だという。
私は「いや、お金だけが働く目的ではない」と内心思っていた。でも、安い給与で人材募集した時は全く反応がなかった。実際に働く人が職場を決めるのは、給与と労働条件である。中小企業の人財確保は、破格ではなくとも競合より少しでも高いことが重要なのだ。
すごくシンプルだが、社員の給与を決める目安は次の2つだと知った。
・給与の3倍稼ぐ
・競合他社よりも高い給与
この給与の目安を知って私は愕然とした。あまりにも現場社員が稼ぐ額が少ないのである。計算してみると給与の2倍ぐらいしか稼ぎ出していなかった。
もちろん経営者として、社員に競合よりいい給与を出してあげたいという思いはある。しかし社員が稼ぐ額が低い場合はどうすればいいのか。
林俊範先生に聞いてみた。
「高い給与は人財を確保するために非常に重要です。ただし、高い給与を払うための仕組みは会社が作ってあげなければいけません。」
つまり、社員給与の目安を決めるのは会社、社長次第なのだという。
社員の給与を決める目安は2つ。
・給与の3倍稼ぐ
・競合他社よりも高い給与
その給与の目安を実現するための仕組みは会社が作らなければならない。
中園 徹