いかに超短期に稼ぐ社員を育成するかは、中小企業にとって大きな課題となる。社員に同じ現場作業を何年もかけて修得させる余裕もない。
はじめは給与の安い新入社員であってもいずれは結婚して家庭を持つ。定着させるためには勤続年数に応じて昇給させなければならない。
そのために必要なのは社員を稼ぐ経営者として育成することである。どんなに会社が小さくとも例外はないだろう。
私は整骨院で起業したが、徒弟制度が常識だった整骨院を会社として運営するためには稼ぐ社員を育てることが必須条件だった。
試行錯誤の経営から5年目に、林俊範先生と出会い、社員育成のためのキャリアパスプランを知った。
源流はアメリカ・マクドナルドのマネジャー育成プログラムだ。それを林先生が、日本マクドナルドに導入するために図式化したものがキャリアパスプランである。当時は世界50か国で共通のものが使われていたそうだ。
マクドナルド創業者のレイ・クロックは経営者の育成に心血を注いだ。実験・検証を繰り返して人財育成のプログラムを作った。それが起業したフランチャイズ経営者を成功させるために必要不可欠だと知っていたからだという。
飲食業のものではあったが、これを整骨院に導入したいと思い勉強を始めた。何も知らない新入社員をマネジャー(店長)に育成して、5~7店舗を経営指導するスーパーバイザー(経営代行者)育成が最終目標となる。
社員を育てるキャリアパスプランには5つの階段がある。内容はランク、業務内容、給与額が明確になっており、経営者と社員の双方に昇給・昇格基準が明確になっている。たとえ、社長のお気に入りの社員でも飛び級でランクアップできない公平な仕組みになっている。
重要なのはランクごとの業務内容である。
- マネジャートレーニー:現場作業の完全修得
- 2ndアシスタントマネジャー:部下の募集・採用・育成
- 1stアシスタントマネジャー:店舗運営のための稼働計画作成
- ストアマネジャー:顧客満足と売上・利益計画の長期目標の達成
- スーパーバイザー:担当店舗の経営指導と数値責任
これを導入するには注意点がある。ランク名と業務内容はそのまま使った方がいい。私はこれを我流でアレンジして失敗した。
「マクドナルドは飲食業。うちの業種とは違うからな」ということで、業務内容を変えてしなうと、キャリアパスプラン本来の機能が失われる。私はそのことに気付くのに5年かかった。
林先生に言われた。
「なぜ、そのまま素直に使わないのですか?」
「素直に信じて実行した人だけが人財を育てることができます。」
そうは言われても、中々素直になるのは難しい。
多くの人が我流で手を加えて「マクドナルドの仕組みはうちに合わない」と断念していく。しかし、基本的に現場マネジメントで大事なのは「人」であり業種による差はないという。
レイ・クロックは、マクドナルドという儲かるハンバーガーショップに経営者育成の概念をお持ち込み、国籍や性別に関係なく公正公平に誰もがランクアップできる仕組みを確立した。それが経営者を育成する5つの階段である。
アメリカマクドナルドでは2年という超短期にスーパーバイザーが育成され、何とその7割が女性だったという。ちなみに日本では、どうしても最短3年は掛かっていたとのこと。
どんなに能力のある経営者でも、一人で経営することはできない。また、どんなに儲かる商売を見つけても、人が育たなければ店を増やすことはできない。
まずは経営者自身が現場すべての業務をマスターして人に任せる。次に自分が店長となり店を切り盛りする。そして右腕、左腕となるアシスタントを育てる。
次の段階として自分の分身となる店長を育てる。そして数店舗の経営に乗りだすのが原則となる。経営者までの道筋となる5つの階段を登ってくる人にだけチャンスが与えられる。
中園 徹