一人で繁盛店を作ってはいけない

17 6月

誰もが夢と希望を抱いて起業する。自分が店主となり、朝から晩まで忙しい繁盛店を夢見る。実現したら本当に幸せなになれるのだろうか。

私も例外ではなく繁盛店を目指した。整骨院で起業して「1日100人来る店」を目標にした。必死に頑張って1年半で達成できた。

目標は達成できたが、もうクタクタになった。土曜日の夕方には体力も限界。そこから指圧を受けに行くのが習慣になった。ある時、指圧の先生に言われた。「あなた、仕事に殺されなさんな」

それから水曜日の午後を休みにすることにして体力の限界を切り抜けた。幸運にも起業時から相棒がいたこともあり助けられた。もし、店が自分一人だったらと思うとゾッとした。

当時、近所に行列のできる美味しい中華そば屋さんができた。ご夫婦で営業されていて、そばは店主が一人で黙々と作っておられた。たまに行くようになったが、始めは元気だった店主も機嫌が悪そうな日が多くなっていった。数年経つと目にクマができてきた、黒さは日ごとに増していった。そして、ある時突然の閉店となった。原因はわからない。

ある有名な針治療の先生が言われた。「昔は一生懸命治療して多くの患者さんが朝から晩まで来てくれました。おかげで大分儲かった。しかし、そのうち『もうお金はいらないから、ゆっくりさせてくれ!』と思うようになったんです。今は後悔してます。あの時、人を育てとけばよかった・・」と。

起業して繁盛店を目指すことは、とてもよい夢だと思う。しかし、自分だけしか運営できない店であることは、大きなリスクを伴う。

起業家が全ての仕事をこなせることは大切なことだが、いつから誰に何を任せるのかも同時に計画することも大切なのだ。

「一人で繁盛店を作ってはいけない」

中園 徹