前回は社員の売上を3倍にする考え方についてお伝えしました。今回は稼ぐ社員とは具体的に何ができる人なのかをお伝えします。
稼ぐ社員とはズバリ言うと「マネジメントのできる人」のことです。「なーんだ。ありきたり」と思われるかもしれません。ここで少し考えていただきたいのが「マネジメント」の意味です。
マネジメントの意味とは何か
ビジネスの現場でもマネジメントという言葉はよく使われます。しかし、マネジメントの捉え方は人によって様々です。もし、新入社員から「マネジメントって何をすることですか?」と聞かれたら何と説明しますか。
マネジメントの語源はラテン語で「手」を意味する「manus」です。「馬の手綱をとる」野性の馬を飼いならすといった意味からきています。自分の意のままにならない馬を思う通り動かす。それがマネジメントの語源です。
これをビジネスに置き換えて考えてみてください。現場を意のままに動かして成果を出す人が「マネジメントのできる人」です。しかし現場は意のままになるほど簡単ではありません。
稼ぐ社員がコントロールする3つのこと
ピープルビジネスにおける「稼ぐ社員」とは、誰もが現場で思い通りならない次の3つのことをコントロールできる人のことを指します。では思い通りにならないこととは何でしょうか。
1番目は「人」です。人について比較的コントロールしやすい順番で考えると、まず自分、家族、そして友人、最後が他人である部下です。起業家の多くはこの順序で人を使いビジネスを始めますが、大抵途中で壁にぶつかります。
では、自分をコントロールすることは簡単でしょうか。自分の体調管理や感情をコントロールすることさえ難しい。では家族はどうでしょうか。夫婦や兄弟でも難しい。ましてや他人を意のままに動かすのは至難の業であることがおわかりでしょう。
思い通りならない2番目は「時間」です。
自分の時間は思い通りにコントロールできるでしょうか。予定通りに仕事を終えるのも簡単ではありません。時間が足りなくなって睡眠を削らざるを得なくなる人もいます。最後は時間の制御が利かなくなり倒れる人もいます。
自分の時間の使い方をコントロールするのも容易ではありません。ましてや、他の人の分までコントロールすることは想像を絶します。
意のままに動かすのが難しい「人」と「時間」。逆にこれを意のままに動かすことができれば「稼ぐ社員」になれるのです。但し、最後にコントロールすべき3番目があります。
それは「数字」です。コントロールすべき数字とは「売上・経費・利益」です。売上を上げるだけでは本当に稼ぐ社員とは言えません。売上に加え、経費までもコントロールして利益を稼ぐ。それが「稼ぐ社員」です。
稼ぐ社員とは優秀なワーカーではなくマネジャー
たとえ一人で稼ぐ社員がいたとしても限界があります。優秀な人力車の担ぎ手であっても、一日に乗せる客数には限界があります。しかし、自分だけでなく、一日に10台の人力車を同時に動かせる社員は大きく稼ぐことができます。
つまり「稼ぐ社員」とは、マネジメントのできる「マネジャー」のことなのです。
ピープルビジネスにおける人財育成には「ワーカー(労働者)のように働いてはいけない」という原則があります。もちろん社員であるマネジャーは、現場作業について熟知していなければなりません。しかし、いつまでも作業に従事していてはいけないのです。
まず、社員自らが現場作業をマスターする。次に部下である「人」をマネジメントして規程の時間内に作業を完結する。その結果として計画通りの「売上・利益」を獲得する。これが「稼ぐ社員」です。1人前のマネジャーになれば、±5%の精度で売上・利益の計画を達成することができます。
特別な能力を持つカリスマ社員でなくとも、「人」「時間」「数字」をマネジメントする方法さえ体得すれば誰でも「稼ぐ社員」になることは可能なのです。
社員が稼ぐようになれば、年功序列に関係なくダイナミックに昇給することもできます。経営者感覚も身に付きます。さらに会社の収益も上げることができるのです。稼ぐ社員の育成とは、成果を出す「マネジャーの育成」なのです。
Point 「稼ぐ社員とは、人と時間を動かし、売上・利益を計画通りに達成できる人である」
中園 徹