マクドナルドの創業者はレイ・クロックですが、ビジネスモデルの原型を作ったのはクロックではありません。ディックとモリスという2人のマクドナルド兄弟の店が始まりです。彼らは個人経営の店をいかに変革したのでしょうか。
兄弟は映画館経営に失敗した後にレストラン経営に乗り出しました。2人の兄弟が料理を作ってテーブルサービスし、カーホップと呼ばれる3人のウエイトレスが駐車場の客に注文を取るという典型的な個人経営の店が始まりです。
1940年。彼らはロサンゼルスの砂漠地帯に新しいユニークな店をオープンします。建物は八角形。店の前面が窓で調理場は丸見えです。メニューは25種類で、ビーフのサンドイッチやバーベキューのスペアリブなどです。店はたちまち繁盛店になりました。カーホップは20人に増やすほどの忙しさです。
しかし好調はいつまでも続きませんでした。繁盛しているとはいえ旧態依然とし個人経営の店です。彼らの店は多くの問題をはらんでいました。やがて彼らの店をマネする同業者たちが現れて売上は徐々に降下しはじめたのです。
個人経営の店は家族だけで長時間経営することが前提です。しかし彼らはカーホップなどの多くの従業員を抱えていました。そのカーホップも競合との争奪戦で人件費が急騰したのです。やっと採用しても条件の良い店に移ってしまいます。
本来、低価格で美味しい料理を提供することが強みの店なのに、コストの高い労働集約型の経営となり利益も思ったように出なくなりました。兄弟は従来型のレストラン経営には大きな欠陥があることに気付いたのです。
彼らは危機感を募らせましたが、店はまだお客が来ている繁盛店です。赤字に陥っていたわけではありません。今まで通り商売を続けていれば、売上や利益は何とか確保できるのです。
彼らの店を守るためにはどんな打開策が必要なのでしょうか。できれば現状を維持しながら競合に勝てる対抗策を考えたいところです。
「メニューを増やしてバラエティに富んだ店にする」「競合に勝つこだわりの新商品を開発する」「満足度アップのため接客サービスを高める」「新規客を増やすためのキャンペーンを打つ」等々。普通ならそんな安全策をとるでしょう。
しかしマクドナルド兄弟が考えたことはダイナミックでした。「このままでは先細りになるだけだ。小手先の改善策ではだめかもしれない。よし、いったん店を閉めて根本的に改革してみよう!」と考えたのです。
何と兄弟は繁盛している店を3ヶ月間も休業して経営改革に取組んだのです。改善ではなく、抜本的な改革の道を選んだのです。いったい彼らはどんなことをしたのでしょうか。詳細は次回へ。
中園 徹