社員を稼ぐマネジャーに育成するためにはどうすればいいのだろうか。
私は社員のやる気を引き出そうとして、個人の稼ぎ高に応じた歩合制にして、手痛い失敗を繰り返した。お金だけで人のやる気を育てることはできなかった。
ふと、ある疑問が出てきた。スポーツや学校の部活動などでは、お金がもらえるわけではないのに、多くの選手たちがやる気を出して日々練習に励んでいる。なぜ、あそこまでやる気が出るのだろう。仕事とスポーツは別なのだろうかと。
起業して5年目。林俊範先生にマクドナルド流の人財育成を教えてもらい謎が解けた。働く人のやる気と成長を促すには3つの基本条件が必要だったのだ。その基本条件とは以下の3つ。
・キャリアパスプラン
・トレーニング
・勤務評価
マクドナルドの人財育成には特徴がある。「何をすれば給与が上がるか」が明確になっており、どんな仕事を習得すれば、ランクと給与が上がっていくかの道筋(キャリアパス)がハッキリしている。それを示したものが「キャリアパスプラン」となる。
「トレーニング」とは教育訓練の略で、正しい業務を教えるための教育ツールや指導法がある。
社員は年3回、業務の修得や成長度合いを評価される機会がある。それが勤務評価となる。評価の内容によって昇給昇格が決定されることになる。
これらの3つの条件が連動することで、人はやる気を出して自ら成長するという。これは人間学に基づいて作られた仕組みなので、すべての分野で応用が可能とのこと。
私自身は、我流で歩合制のキャリアパスプランを作り、勤務評価もしていなかった。だから人が育たなかったのかと反省した。特にトレーニングにおいては、業務に直結しないような精神訓練と士気高揚を一生懸命やっていた。これも人財育成の原則からは外れたものだった。
人財育成の基本条件を知って過去に抱いた謎も解けた。スポーツなどの分野でも目標とする「道筋(キャリアパス)」は明確だ。それに向けて皆が日夜トレーニングに励んでいる。その晴れ舞台が試合や昇格審査となる。だからお金に関係なく皆が頑張っているのだと。
私は仕組みのあり方にも大いに感銘を受けた。「やっぱり、人の育成にはスポーツも仕事も関係ないんだ。条件さえ整えてあげれば人は育つ」と。
考えてみれば、私が会社員だった時に「何をすれば給与が上がるか」を明確に教えてもらったことは一度もなかった。私は入社3年目に起業を目指して退職したが、もしキャリアパスプランがあればもっと続けていたかもしれないと思った。
林先生が日本マクドナルドに入社した際も、数年間で初任給の2倍、3倍と昇給してビックリしたそうだ。しかし、お金を目的として考えたことは一度もなかったとのこと。
林先生は言われた。
「条件を整えてあげれば人は自ら育ちます。国籍や学歴は一切関係ありません。」
これらの原理原則を忠実に再現すれば、社員ひとり一人のやる気を引き出すだけでなく、生産性向上と即戦力化が可能になるという。
私は人財育成を我流で制度化することの恐ろしさを感じた。もし、この仕組みに出会わなかったら人財育成で一生悩むことになっていただろう。これは人生経験や経営のキャリアだけで編み出すことはできないと。
社員をやる気を育てるための条件は3つ。
「キャリアパスプラン トレーニング 勤務評価」
これらの3つの条件は、どれが欠けても効果はない。すべてが連動することでやる気は育てられる。
中園 徹